
この記事では、アメリカのソーシャルセキュリティ(Social Security)を日本語でわかりやすく解説します。
SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)の役割 → 受給額の計算方法 → 財政問題の順で深掘りし、日米の年金の違い、専業主婦(Spousal Benefit)の考え方、日米合算(トータライゼーション協定)、公式サイトでの金額確認までを一気に把握できます。
目次
ソーシャルセキュリティとは?(概要)

ソーシャルセキュリティは、アメリカの公的年金制度(老齢・遺族・障害:OASDI)で、働いて給与からFICA税(雇用主と折半)を納めることで将来の給付資格と給付額が決まります。
年金だけでなく、遺族・障害・メディケア(医療)にも関係する一大制度です。
SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)の役割
- あなたの生涯賃金の記録キー(賃金記録をSSNにひもづけ)。
- 将来の年金・遺族・障害給付の資格と金額を計算するために必須。
- 税務(IRS)や就業手続きでも使うため、厳重な管理が必要。
SSNから受給額が決まるまでの流れ(概念図)
[就業 & 納税] │ (FICA/SECA) ▼ 【賃金記録(SSN単位)】 ▼ 最高35年を指数調整して平均 【AIME:平均被保険月収】 ▼ 2025年ベンドポイントで計算 【PIA:基礎年金額】 ▼ 受給年齢で増減(62〜70歳) 【実際の月額給付】
日米の年金の違い(超ざっくり比較)
項目 | アメリカ(Social Security) | 日本(公的年金) |
---|---|---|
資格の基本 | 原則40クレジット(約10年)で老齢年金の受給資格 | 保険料納付月数に応じて老齢基礎年金・厚生年金の受給資格 |
算定の考え方 | 生涯の上位35年の賃金を指数調整→AIME→PIA(段階比例) | 賃金や加入期間に応じた給付(定額+比例) |
受給開始 | 62〜70歳(1960年生まれ以降のFRA=67歳) | 原則65歳(繰上げ繰下げあり) |
配偶者給付 | 配偶者は最大50%(FRA時、本人PIAの半額) | 加給年金・振替加算など仕組みが別 |
受給資格とクレジット(Credits)
- 年に最大4クレジットまで獲得可(パートでもOK)。
- 老齢年金の受給には40クレジット(約10年)が目安。
- 必要な賃金額は年ごとに変動(例:2025年は$1,810で1クレジット、年4クレジットなら$7,240が目安)。
受給額の計算:AIMEとPIAをやさしく
AIME(平均被保険月収)
生涯の上位35年の賃金を物価に合わせて調整し、月平均化した値がAIMEです。
35年に満たない年はゼロが入るため、短い就業年数だと平均が下がります。
PIA(基礎年金額)
PIAはAIMEに段階比例(ベンドポイント)を当てて算出します(2025年基準)。
・AIMEの最初の $1,226 → 90% ・次の $1,226〜$7,391 → 32% ・$7,391超 → 15% = これを合計したものが PIA
実際の受給額は、FRA(67歳)を基準に
62歳で早く受け取ると減額(約30%)、70歳まで遅らせると最大+24%の増額(遅延退職クレジット)になります。
例:就業年数×年収レンジ別の概算(月額・2025年ベース)
※実際は指数調整・賃金プロファイル・課税上限などで大きく変わります。目安の学習用サンプルです。
ケース | 就業年数 | 想定平均年収 | AIME概算 | PIA概算(FRA=67) | 62歳受給 | 70歳受給 |
---|---|---|---|---|---|---|
短期+低〜中収入 | 10年(=40クレジット) | $30,000 | 約$714 | 約$643 | 約$450(▲30%) | 約$797(+24%) |
標準的 | 35年 | $60,000 | 約$5,000 | 約$2,311 | 約$1,618 | 約$2,866 |
高収入 | 35年 | $130,000 | 約$10,833 | 約$3,593 | 約$2,515 | 約$4,452 |
年齢による増減のイメージ
FRA=67歳のPIAを100%として 62歳 ────────────── 70% 63歳 ──────────────── 75% 64歳 ───────────────── 80% 65歳 ─────────────────── 86.7% 66歳 ───────────────────── 93.3% 67歳 ─────────────────────── 100% 68歳 ───────────────────────── 108% 69歳 ─────────────────────────── 116% 70歳 ───────────────────────────── 124%
専業主婦(配偶者)の受給:Spousal / Survivor
- 配偶者給付(Spousal):配偶者のPIAの最大50%(あなたがFRAで請求した場合)。あなた自身の老齢給付がある場合は、高い方が支給(加算ではなく差額支給)。
- 早期請求:62歳で請求すると配偶者給付は約32.5〜35%に減額。
- 子の養育中の配偶者:一部のケースで減額なし。
- 離婚配偶者:婚姻期間10年以上などの要件を満たせば、元配偶者の記録に基づく受給が可能。
- 遺族給付(Survivor):亡くなった配偶者の給付額に基づく給付(年齢や状況で調整)。
日米合算:日米社会保障協定(Totalization)
アメリカ(Social Security)と日本(厚生年金・国民年金)の二重加入の回避と、資格期間の通算を可能にする協定です。ポイント:
- 米国の40クレジットに満たない場合でも、日本での加入期間と合算して資格要件を満たせることがある。
- ただし金額は合算されない:それぞれの国が、それぞれの制度下での加入期間・賃金に応じて比例配分して支給。
- 手続きは各国に申請(出入国・在住状況で窓口が変わる)。
公式サイトでの金額チェック
- my Social Security(無料アカウント)で、受給見込額の確認、賃金記録のチェック、カード再発行などが可能。
https://secure.ssa.gov/RIL/SicspView.action - 概算だけ知りたいならQuick Calculatorなどのオンライン試算ツールも便利。
財政の見通し(直近の公式見通し)
直近のトラスティーズ・レポートでは、老齢・遺族年金(OASI)信託基金は2033年に準備金が枯渇見込み。障害(DI)は長期的に枯渇見込みなし。
OASIとDIを仮に合算したOASDIは2034年に枯渇と試算。ただし枯渇後も保険料収入で約7〜8割の給付は継続可能とされています(法改正が無い場合の試算)。
よくある質問(FAQ)
Q. 何年働けば受給できますか?
A. 原則40クレジット(約10年)で老齢年金の資格が得られます。金額は賃金水準と年数で大きく変わります。
Q. 専業主婦でも受給できますか?
A. 配偶者の記録に基づく配偶者給付(最大50%)の制度があります(あなたがFRAで請求時)。
Q. 日本で払った年金はムダになりますか?
A. 日米のトータライゼーション協定により、資格期間の通算が可能な場合があります。金額は各国が別々に支給します。
注意・免責
- 本記事は一般情報です。個別の条件(移民ステータス、就労形態、離婚・遺族など)で結果は変わります。
- 最新の数値(クレジット要件・ベンドポイント・課税上限・FRAなど)は毎年更新されるため、必ず公式サイトで確認してください。
まとめ
- SSNは生涯賃金の記録キー。賃金記録→AIME→PIA→受給額の流れ。
- 受給資格は40クレジットが原則。給付額は上位35年の平均賃金と受給年齢で決まる。
- 配偶者給付、日米合算の活用も検討を。
- 見積りはmy Social Securityのアカウント作成が最速。

コメント